綿雲のしるべ

思い浮かんだことを置いておく場所。読書感想ブログ

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『人間の土地』サン=テグジュペリ

愛するということは、おたがいに顔を見合うことではなくて、一緒に同じ方向を見ることだ 8章 人間 小さいころから人付き合いは得意な方だった。友人は多かったし、新しい環境に移ったとしてもすぐにまた新しい友人ができた。 それなりに充実していたし、それ…

『氷』アンナ・カヴァン

灰色の空。荒廃し、崩れ落ちた砦の瓦礫。捨てられた町、立ち並ぶ木々の黒い影。降り積もる白い雪。そんなモノクロの景色の中に異様な存在感をもってそびえる巨大な氷の壁。それがなぜ、何のために現れたのかは一切不明だが、氷は徐々に拡大し世界を飲み込ん…

『夜間飛行』サン=テグジュペリ

あの農夫たちは、自分たちのランプは、その貧しいテーブルを照らすだけだと思っている。だが、彼らから八十キロメートルも隔たった所で、人は早くもこの灯火の呼びかけを心に感受しているのである。あたかも彼らが無人島をめぐる海の前に立って、それを絶望…

『日の名残り』カズオ・イシグロ

私は選ばずに、信じたのです。 ― 六日目―夜 より 大人になるとつい考えてしまうことがある。幼いころ、未来が希望に溢れていた日々。自分の価値観を信じ、歩んできたこの道。しかし、あの時もし過ちに気づくことができたならば。違う道を選んだ私の今は、い…