綿雲のしるべ

思い浮かんだことを置いておく場所。読書感想ブログ

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『それから』夏目漱石

彼はただ彼の運命に対してのみ卑怯であった。 第十四章 より 人に何かを説明することは難しい。相手の能力や性格、前提として共有できている事柄の程度に応じて、話す順序や使う言葉を選ばなくてはならない。どうしたらわかってもらえるんだろう。あれこれ考…

『三四郎』夏目漱石

人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人に親切がしてみたいものだ。 第九章 より 前期三部作とも呼ばれる夏目漱石初期の作品群の第一作目。『こころ』をはじめ、夏目漱石の作品は後に行けば行くほど人の心の葛藤や孤独を描く難解なものになっていく。…

『草枕』夏目漱石

智に働けば角が立ち、情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。 今年の夏、私は京都に出かけた。京都といえば古いお寺や神社などが立ち並ぶ古都という印象を描きがちである。実際には近代化が進んでおり、駅前の景色なんて東京…